MSC24-C. 非推奨関数や時代遅れの関数を使用しない
非推奨(deprecated)関数や時代遅れ(obsolescent)の関数は、より安全な同等の関数があるときには使用しないこと。非推奨関数は C 標準によって定義されている。時代遅れの関数とは、このレコメンデーションで定義しているものを指す。
非推奨関数
gets()
関数は、C99 の正誤表 3 で非推奨とされ、C11 で削除された。
時代遅れの関数
以下の表の第 1 列の関数を「時代遅れの関数」と定義する。アプリケーションで行っている時代遅れの関数の呼出しを修正するためには、このガイドラインに適合したインラインコーディング、またはこのガイドラインに適合した代替ライブラリ、または代替の「時代遅れでない関数」を使用できる。
時代遅れの |
推奨される |
理由 |
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再入不可能 |
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エラー検出がない |
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エラー検出がない |
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エラー検出がない |
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エラー検出がない |
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再入不可能 |
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ファイルへの排他的アクセスなし |
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ファイルへの排他的アクセスなし |
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エラー検出なし |
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エラー検出なし |
atof()
、atoi()
、atol()
および atoll()
は時代遅れの関数である。これらの関数は strtod()
、strtof()
、strtol()
、strtold()
、strtoll()
、strotul()
および strtoull()
関数でエミュレートでき、より堅牢なエラー処理機能を備えている。「INT05-C. 可能性のあるすべての入力を処理できない入力関数を使って文字データを変換しない」を参照のこと。
fopen()
および freopen()
関数は時代遅れの関数である。ファイル保護を設定し排他的アクセスでファイルをオープンする fopen_s()
および freopen_s()
関数によってそれらの関数をエミュレートでき、ファイルを不正なアクセスから保護できるからである[ISO/IEC WG14 N1173]。
setbuf()
関数は値を返さず、setvbuf()
でエミュレートできるため、時代遅れの関数である。「FIO12-C. setbuf() ではなく setvbuf() を使用する」を参照のこと。
rewind()
関数は値を返さず、fseek()
でエミュレートできるため、時代遅れの関数である。「FIO07-C. rewind() ではなく fseek() を使用する」を参照のこと。
asctime()
および ctime()
関数は、再入不可能な静的バッファを使用しており、asctime_s()
および ctime_s()
でエミュレートできるため、時代遅れの関数である。
未チェックの時代遅れの関数
以下の関数を、未チェックの時代遅れの関数と定義する。
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アプリケーションで行っている未チェックの時代遅れの関数の使用を修正するためには、このガイドラインに適合するインラインコーディング、または、このガイドラインに適合する代替ライブラリ、または C11 Annex K で規定されている代替の「時代遅れでない関数」を使用できる。
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または、ISO/IEC TR 24731-2、Extensions to the C Library—Part II: Dynamic Allocation Functions [ISO/IEC TR 24731-2] に規定されている代替の「時代遅れでない関数」を使うこともできる。
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違反コード
次の違反コード例では、時代遅れの関数 strcat()
と strcpy()
が使用されている。
#include <string.h> #include <stdio.h> enum { BUFSIZE = 32 }; void complain(const char *msg) { static const char prefix[] = "Error: "; static const char suffix[] = "\n"; char buf[BUFSIZE]; strcpy(buf, prefix); strcat(buf, msg); strcat(buf, suffix); fputs(buf, stderr); }
適合コード
次の適合コードでは、strcat()
と strcpy()
が strcat_s()
と strcpy_s()
に置き換えられている。
#define __STDC_WANT_LIB_EXT1__ #include <string.h> #include <stdio.h> enum { BUFFERSIZE = 256 }; void complain(const char *msg) { static const char prefix[] = "Error: "; static const char suffix[] = "\n"; char buf[BUFFERSIZE]; strcpy_s(buf, BUFFERSIZE, prefix); strcat_s(buf, BUFFERSIZE, msg); strcat_s(buf, BUFFERSIZE, suffix); fputs(buf, stderr); }
リスク評価
非推奨関数や時代遅れの関数は、しばしばソフトウェアの脆弱性の原因となる。
ルール |
深刻度 |
可能性 |
修正コスト |
優先度 |
レベル |
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MSC24-C |
高 |
中 |
中 |
P12 |
L1 |
自動検出(最新の情報はこちら)
ツール | バージョン | チェッカー | 説明 |
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ECLAIR |
1.2 |
CC2.MSC34 |
実装済み |
関連するガイドライン
CERT C Coding Standard |
ERR07-C. よりよいエラー検査を行える関数を使用する |
ISO/IEC TR 24772 | Use of Libraries [TRJ] |
MISRA C:2012 | Rule 21.3 (required) |
MITRE CWE | CWE-20, Insufficient input validation CWE-73, External control of file name or path CWE-192, Integer coercion error CWE-197, Numeric truncation error CWE-367, Time-of-check, time-of-use race condition CWE-464, Addition of data structure sentinel CWE-676, Use of potentially dangerous function |
参考資料
[Apple 2006] | Apple Secure Coding Guide, "Avoiding Race Conditions and Insecure File Operations" |
[Burch 2006] | Specifications for Managed Strings, Second Edition |
[Drepper 2006] | Section 2.2.1 "Identification When Opening" |
[IEEE Std 1003.1:2013] | XSH, System Interfaces, open |
ISO/IEC 23360-1:2006 | |
[ISO/IEC WG14 N1173] | Rationale for TR 24731 Extensions to the C Library Part I: Bounds-checking interfaces |
[Klein 2002] | "Bullet Proof Integer Input Using strtol() " |
[Linux 2008] | strtok(3) |
[Seacord 2013] | Chapter 2, "Strings" Chapter 8, "File I/O" |
[Seacord 2005b] | "Managed String Library for C, C/C++" |
翻訳元
これは以下のページを翻訳したものです。
MSC24-C. Do not use deprecated or obsolescent functions (revision 55)